2013年5月15日水曜日

日光観光〜その2 日光東照宮の表門と神厩舎の「見ざる、言わざる、聞かざる」の意味

さあ、いよいよ表門をくぐります。


 

 この表門は三間一戸の八脚門で、門の両側には顔の大きさが1m近くもある「阿」「吽」の形相をした二体一対の仁王像が門を守っています。 

阿吽はもともとインドの古い言葉から来ている言葉で、息がぴったり合う状態を表すときに「阿吽の呼吸」などといいますよね。

阿吽はもともと五十音のもともとの「あ」と「ん」にも通じる意味があり、阿吽という言葉で「初めから終わりまで」を意味することもあります。 

人が産まれてくるときに「あー」と泣いて、死ぬときに「んー」と息を吐いて死ぬというところから、密教では「阿」はすべての初まりであり、「吽」は最終的に到達する悟りを表していると言われています。 

この門を守る「阿吽」の像は「産まれてから死ぬまで」、「無垢の心から悟りまで」を表しているそうです。


 


 門を通るときに「吽」の像の表情を見ましたが、ちゃんと目が合いました。これは門を通る人をちゃんと視ているという意味もあるのかもしれません。 

「阿」の像の方も同じように門をくぐる人をちゃんと視ています。


 


 門の柱には金色の「象」がくっついていて、とてもきれいです。 表門をくぐると正面に右側に「中神庫」左側に「上神庫」が見えて来ました。


 


鮮やかな朱塗りの建物の中には東照宮の神事の装束や祭器が納められています。 朱色が鮮やかです。


 


 屋根には象がついてますが、これは実際に象を見たことがない当時の人が想像で作った物だそうですが、結構あってますね。


 


 ちょっと全体の写真を撮り忘れてしまいましたが、「見ざる、言わざる、聞かざる」で有名な建物、「神厩舎」が表門をくぐった左手にあります。 

この「神厩舎(しんきゅうしゃ)」は神馬をつなぐとされた馬舎で「猿が馬を病気から守る」という信仰から猿の彫刻が飾られています。 実際に白馬が建物の中にいましたが、数時間いるだけで本当は別のところにいるそうです。たしかに厩舎の中が結構狭いのでずっとそこにいるのは馬がかわいそうですからね。 

さて、有名な「見ざる、言わざる、聞かざる」の猿の彫刻ですが、実は他にも猿がいてしかも、すべてに意味があります。 

まず、最初の親子の二匹の猿ですがこれは、母親と子供の猿で、母親が遠くを見ているのは時間としての遠方、つまり未来(子供の将来)を見ています。そして、その母親の視線の先には実を付けた枇杷(びわ)と朱色の雲があり、それらは「バラ色で実り豊か」な子供の未来を暗示しているそうです。

 


 次の画が有名な「見ざる、言わざる、聞かざる」の画です。

こちらは、幼いうちは純真で周囲の影響を受け易くから「世の中の悪いことは見聞きせず、悪い言葉も使わせず、良いものだけを与えよ」という意味だそうです。この時期に良いものを身につけておけば、悪い物に触れ(対し)ても正しい判断や行動がとれるということを表しています。


 


 次は、一匹の座った猿がいるだけです。これは、座っていることで「未だ立っていない」ということを表し、さみしそうな感じは孤独に耐えつつも、これからの人生を考えていて、やがて立ち上がればそれが、「自立、一人立ち」(精神的にも肉体的にも)になるという意味です。


 


 次は、二匹の猿が上を見上げています。これは、希望を持って上を見上げる青年期のイメージで、右上に青雲があり、「青雲の志」を抱いた若い猿のイメージです。家康公の遺訓の「上を見な、身の程を知れ」という言葉を表しているようです。


 


 次は三匹の猿がいます。右側にいる猿は、木の上で前方を凝視して、一番左側の猿は岩の上にいます。左から二番目の猿は崖からの転落から免れた状況(木から落ちた?)。その猿を一番左の猿が背中をさすっている様子から友達を慰める、または励ましている状況がわかります。


 


 次は二匹の猿で、右側の猿は座って腕を交差して正面を凝視しています。そして、もう一匹は何か考えて決断を迫られているようです。つぎの画から考えると、これは右側の猿は結婚を決意した状況で、左側の猿は現在悩んでいる状況なのかもしれません。


 


 次の画は、左下に荒れている波があり、右側にはバラの花があります。そして、右側の猿が左側の猿に長い左手を差し伸べています。そして、左側の猿は腕組みをしています。右側の猿の上には赤い雲があります。これらは2人で力を合わせれば「人生の荒波」も乗り越えられるというイメージです。


 


 これが最後の画です。この画では結婚した2人が協力して荒波を乗り越え、平安な家庭環境を築き、子供が出来れば親になり、最初の画に戻りすべての画で「永遠の生命が受け継がれて行く」ということを暗示してます。


 


 有名なのは「見ざる、言わざる、聞かざる」ですが、その画の意味とすべての意味がわかると、より面白いですね。

これらの解説は現地に書いてあったものですが、これらの説明が正解とはかぎりません。当時の作り手や依頼主がどのような意味を持たせたかは当時の人にしかわからないですが、その意味を読み解く作業というのは面白いものですね。 

それにしても、結構損傷が激しくところどころ色が剥がれ落ちているのが気になりました。出来た当初はものすごくきれいだったと思います。

もし、補修されればまた見てみたいですね。

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